弦のテンションを見るときはテンション表記だけでなく合計の張力、さらには各弦の張力やバランスも見ると良い

ギターの弦を選ぶときにテンション(張力)を気にしている人は多いと思います。でも、「ハード」「ノーマル」「ライト」といった表記や合計の張力だけを気にしていないでしょうか?実は各弦のテンションのバランスはメーカーや製品によって結構違うんです。

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何の指標もないテンション表記

まず重要なのは、クラシックギターに限らずギター弦のテンションの表記には何の指標もないという点です。そのメーカーが、その製品のシリーズに対して相対的につけているものでしかありません。

たとえばノーマルとミディアムで実測された合計の張力値(現代ギター2018年11月号より)を各社各製品比べるとこのようになっています:

製品張力
プロアルテ(EJ45)39.4kg
プロアルテ カーボン(EJ45FF)44.5kg
サバレス ニュークリスタルカンティーガ(510CR)38.3kg
サバレス アリアンスカンティーガ(510AR)41.1kg
ハナバッハ シルバースペシャル39.55kg
アクイーラ ぺルラ38.1kg
アクイーラ ルビーノ40.8kg

したがって、プロアルテのノーマルテンションとサバレスのノーマルテンションを弾いた時の張りが違うように感じるのは当然ですし、プロアルテでも普通のナイロン弦とカーボン弦ではテンションが違います。

合計のテンションはパッケージの裏に書かれているものもありますが、kgではなくポンド表記だったり弦の太さしか書かれていない場合もあります。

プロアルテEXPノーマル EXP45のパッケージ裏

人によって違いますが、合計のテンションが40kgを超えてくると張りが強く感じられるかと思います。

弦のテンションのバランスも大きく違う

さらに面白いのは1~6弦のテンションのバランスです。

たとえば合計が42㎏だったからとって、各弦のテンションがすべて42 ÷ 6 = 7kgというわけではありません。

上で紹介した弦の各弦の張力をグラフ化したものが以下です:

クラシックギター弦の1~6弦の張力

これだとよくわからないので、1弦の張力に対してどれだけ張力が強いかという値に正規化します:

クラシックギター弦の1弦に対する張力のバランス

この通り、テンションのバランスはバラバラです。

特に差が大きいのが低音弦と高音弦のバランスです。プロアルテ(EJ45)やハナバッハは1弦と低音弦のバランスが比較的とれていますが、アリアンスカンティーガ(510AR)は低音弦の方がかなりテンションが低いです。

最近のカーボン弦をはじめとする新素材の弦はテンションが高く、低音弦に比べて高音弦が突出する傾向にあります。

一方、1弦に対する2,3弦のテンションのバランスはアクイーラのルビーノをのぞいてそれほどばらつきがありません。どちらかというと昔ながらのナイロンを使っている弦は2弦と3弦のバランスが取れているのに対し、新しい弦は3弦の張力を落としているようです。おそらく、3弦の鳴りをよくするためなのでしょう。

アクイーラのルビーノの張力バランスは独特です。比較的どの弦もバランスが取れています。手持ちの在庫にあるのでレビューが楽しみです。

また、カンティーガは4弦の張力がやたらと高くなっていたり、プロアルテカーボンは6弦の張力が高かったり、各社が目指す音作りが垣間見えて面白いです。

同じシリーズのノーマル(ミディアム)、ハイ間でも大きく違う

さらに面白い(ややこしい?)ことに、同じメーカーの同じシリーズであっても、テンションの変え方が大きく違います。

たとえば、ラベラ 2001の各テンション表記の各弦の張力をグラフにするとこのようになります:

ラベラ2001の各テンションの各弦の張力

2,3弦はほとんど変わっていない一方、5弦と6弦が極端にテンションが上がっています。また、低音弦はテンションが逆に下がっているところもあります。

また、以下の記事で書きましたが、実はハナバッハのスーパーロー、ロー、ミディアムの高音弦は同じものです:

特定の弦のテンションが高い/低いと感じているときはテンションを変えた時にその減の張力が本当に思った通り変わるのか、他の弦が極端に変わったりしないか確認した方がいいかと思います。

テンション表記だけにとらわれず、合計張力だけにとらわれず選びたい

このように、一口にノーマルやハイといっても合計の張力も違えば各弦のバランスも違い、さらにテンション表記が変わってもその変化の仕方はバラバラであることがわかります。

お気に入りの弦があればぜひ一度各弦の張力やそのバランスを見てみると良いです。たとえば1弦が突出している弦が好きならしっかり鳴る1弦となりやすい2,3弦が好きだということですし、低音弦の張力が低いのが好きであれば、重厚さよりもスピード感を重視しているのかもしれません。

一方で、あまりにも数値のデータだけにとらわれるのも楽器としては良くないところなので、まずは自分が感じた音質で選び、そこから深堀するのに役立てたいものです。

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