ギターにはなぜ「0フレット」がない?0フレットを手軽に取り付けて弾きやすさや調弦しやすさを向上する「Zero Glide」

Zero Glideで0番目のフレットを付けたクラシックギター ギター用品

ギターの開放弦を弾く際は一般的にフレットではなくナットによって弦の振動範囲が決められています。このナット、弦をまっすぐに張るためには必要なのですが、フレットで弦の振動範囲を決めるのに比べていくつか問題があります。そこでロゼッタがギター用に販売しているのが、0フレットをギターに装着するための「Zero Glide」です。最近クラシックギター版も登場したので紹介したいと思います。

開放弦はなぜフレットではなくナット?

ギターを開放弦で弾く際、その振動範囲は骨などでできているナットとサドルで決められます。一方、開放弦以外の場合はナットが金属製のフレットに変わります。

ナットが使われるのは、弦をまっすぐに張るためです。もしナットの代わりに金属製のフレットが置いてあると、弦はペグの軸に向かって斜めになってしまいますが、ナットに溝を掘ることで指板上はまっすぐ、ヘッドからは軸に向かって曲げることができます。

フレットではなくナットを使う問題点

ただ、ナットにはいくつかの問題があります。

弦との摩擦による摩耗

その1つが特に低音弦によって発生する摩耗です。

金属製の巻き弦である低音弦はチューニングの際にナットを削り寿命を縮めます。

また、ナットが削れると弦高が変わってしまいます。サドルの弦高についてはよく触れられますが、実はナットも弦高に寄与しており、高すぎると弾きづらく、低すぎると弦が指板に当たってノイズが出るでしょう。

ちなみに逆にサドルを下げすぎて雑音が出た場合、ナットの高さを上げることで指板に弦が触れないようにできます。これにより弾きづらいハイポジションの弦高は下げることが可能です。

チューニングが安定しない

ナットは溝を通して弦を押さえているため、ナットの溝の加工が甘いとチューニングが安定しません

また、溝に過度の摩擦があるとペグを回しても弦が引っかかって音程が変わらないことがあります。

ナットに弦を押さえる機能とまっすぐに張る機能の両方を持たせた弊害なのでしょうね。

音質の差

さらに金属製のフレットで弦を押さえたときの音質と、骨などでできているナットで弦を押さえたときの音質の差が気になる方もいるかもしれません

また、ナットの作りが甘い場合は弦がしっかりと押さえられず、フレットに比べて振動しづらくなってサステインが短くなることもあります。

昔はゼロフレットを採用したギターが存在していた

実は昭和の時代にはかつてゼロフレットを採用したギターがありました

これはナットの素材の品質が悪く、すぐに削れるために対策としてゼロフレットを置いたのだとか。

最近はナットの品質が上がったので摩耗の意味では不要になっており、標準でゼロフレットを持っているギターはほぼ皆無です。

後付けでゼロフレットにできるロゼッタの「Zero Glide」

ナットに不満を持つ方のため、カスタマイズパーツとしてロゼッタが「Zero Fret System」という後付けのゼロフレットキットを販売しています

クラシックギター用は5mm厚のものと6mm厚のものの2種類です:

クラシックギターだけでなく、アコギやエレキ、ベース用のものも販売中です:

薄めのナットとフレットのセット

このZero Glideは、一言でいえば薄めのナットとフレットのセットです。

以下の右端の写真のように、取り付けるとナットの手前にフレットが配置され、開放弦でもフレットを使って弦が押さえられるようになります:

出典:https://www.rosetteguitarproducts.com/zero-fret-for-classical-guitar

断面図はこんな感じです:

出典:https://www.rosetteguitarproducts.com/zero-fret-for-classical-guitar

フレットは4つの異なるサイズが同梱されており、好みの弦高にセットできます

また、ナットは骨製でCNCを使って正確にカットしているとのことです。

フレットは交換可能であり、摩耗したら新しいものへと交換できます。

取り付けは既存のナットと交換するだけ

取り付け方法は簡単で、既存のナットを取り外しZero Glideと交換するだけです。ロゼッタは1時間もかからないといっています。

クラシックギター用にはナットの厚みが5mmと6mmのものが用意されており、既存のナットに近いものを選んでください。

Zero Glideにはヤスリが付属しており、少し大きめのものを買って削ることでしっかりとフィットさせられます。

ナット幅はどちらも52mmです。

お試し程度であれば自分でもできそうですし、ギター専門店に依頼すればより正確に取り付けてくれるでしょう。

Zero Glideを使うメリット

Zero Glideを使うと、まず、ナット側の弦高調整が簡単になります

通常はナットの作り直しや研磨、スペーサーの挿入が必要になりますが、付属の4つのフレットから選ぶだけなのでお手軽です。

ナットの高さを変えてみたい方におすすめといえます。

また、先述のナットのデメリットが解消されますので、音質が均一になって向上し、チューニングが安定しそうです

お手軽なカスタマイズとしていかが?

Zero Glideはゼロフレットを手軽に試せる便利なキットです。

音や演奏性、チューニングにこだわるなら試す価値があります。

ただ、どれくらいの効果があるかは人や楽器次第の面があるかと思います。

ナットには長い歴史があり、これで大きな問題ないからこそ多く使われているに違いありません。

とはいえ、Zero Glideは1時間もかからずに取り付けられるそうなので、ギターの手軽なカスタマイズとして試すのには面白いかなと思います。話の種に試してみてはいかがでしょうか?

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