弦の評価: ダダリオ プロアルテ コンポジット ノーマルテンション (D’Addario Pro-arte Composites Normal Tension EJ45C)

4.0
プロアルテ コンポジット ノーマル EJ45C

プロアルテの中でも少々変わった弦をレビューしたいと思います。この弦、3弦が2つついているんです。間違いではなくそういう仕様です。音はよく、良い弦です。

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「コンポジット」素材を使用した弦

このプロアルテコンポジットの特徴は、その名前にもある通り、「コンポジット」素材を使用しているところです。

compositeとは合成物とか複合素材を意味するのですが、具体的にどういう材料なのかはわかりません。販売元の情報では低音弦には多繊維で鎖状の芯線を使っているとのことです。鎖状というのは撚糸のことを言っているのでしょうか?

3弦がコンポジット素材とナイロン素材の2本入っている

パッケージを開けて最初に気づくのは3弦が2本入っているという点です:

透明な方がなじみのあるナイロン弦、茶色に見える弦がコンポジット弦です。

これは間違ってこうなったのではなく意図的なものです。説明書きには、

このセットには2種類の3弦が入っています。コンポジット弦は遠達性がナイロン弦よりもあり、高音弦とナイロン弦の音量バランスを改善します。また、この素材は少し明るい音を持ち、巻弦の音の特性に近いです。コンポジット素材はコーヒー色であり通常のナイロン弦と容易に見分けることができます。

とあります。つまり、3弦のこもった音を改善しつつ、巻弦とモノフィラメント弦の音の差をうめられるということですね。こじんてきには「コーヒー色」というより「キャラメル色」の方があっているような気はしますが。。。

私の記憶ではこのコンポジット弦が発売されたのは2000年代半ばで、それまではクラシックギターのこもった3弦の音を改善するにはサバレスのアリアンスを張るくらいしか方法がありませんでした。

それが、このコンポジット弦の登場でフロロカーボン弦以外の選択肢ができたというところに驚きを覚えた記憶があります。

弦自体は硬く柔軟性がなく、プラスチックのような感触です。なんとなく、以前レビューしたドーガルのマエストラーレの高音弦に似た感じのような気がします。同系統の素材なのかもしれませんね。

本来の音が出るまでに時間がかかるが寿命が2~3倍ある低音弦

上の注意書きを裏返すと、低音弦に関する注意書きが現れます:

ここには以下のように書かれています:

コンポジット低音弦は多繊維のより糸の芯線を使っており、力強く暖かい音を出します。また、この弦は通常の弦よりも2~3倍長持ちします。コンポジット素材は通常の多繊維芯線とは異なる物理的な特性を持ち、本来の実力を発揮するまでに長めの慣らし運転期間を必要とします。慣らし運転が終わった後はコンポジット低音弦は通常の弦と同じ輝かしい音を特徴とし、かつ音の輝きが非常に長く続きます。

サバレスのカンティーガも張ってからいい音が出るまでに時間がかかりましたが、同じような特性を持っているのかもしれません。

1,2弦は通常のプロアルテと同じ

このように3~6弦は特徴のある弦を備えていますが、1,2弦に関しては通常のプロアルテと同じナイロン弦を採用しています。

この弦が発売されたころはまだカーボン弦といえばキンキンした音が出るという評判であまり広く受け入れられていませんでした。また、チタニウム弦に関しても出たかまだ出てないかくらいだったので選択肢はなかったのでしょう。

とはいえ、品質の高さでは定評のあるプロアルテのナイロン弦なので問題はありません

見た目の違和感は意外とない

早速張ってみた写真がこちらです。せっかくなので3弦はコンポジット弦にしています。

「コーヒー色」の弦ではありますが、思ったほど違和感はありません。上で紹介したマエストラーレに比べれば全然(笑)。

3弦はこもらず、明るく開放的な音がする

まず高音弦に関しては、1,2弦はプロアルテらしく癖がなくかつ明るい音がします。テンションも低めで弾きやすいです。

問題の3弦ですが、ダダリオの言う通り明るくて開放的な音がします。こもりがちの3弦の音が改善され、確かに4弦とのつながりが良いです。

ただ、表面がナイロン弦に比べると滑りづらいのか、爪の磨き方が甘いと少しキュッキュッという雑音が出ます。タッチや爪に敏感そうです。

ちなみに、コンポジット弦とナイロン弦の太さとテンションは以下のようになっています:

太さ張力
ナイロン弦1.02 mm5.39 kg
コンポジット弦1.02 mm5.56 kg

太さはどちらも同じですが、テンションはコンポジットの方がやや高いです。とはいえ、他社の3弦はもっとテンションが高いものがあるのでノーマルからローテンションといえるかと思います。

プロアルテEXPやXTよりも明るい低音弦

一方、低音弦は明るい音がして、音の太さや重厚さよりもスピード感を重視した音のように思います。

実はコンポジット素材の芯線を使った弦はコンポジットだけでなく、プロアルテのEXPXTも同じものを使用しています。

ただし、音は明らかにコンポジットの方が明るいように思えます。調べてみたところ、コンポジットの方がテンションが高い設定になっています:

コンポジットEXP/XT
4弦6.19 kg5.60 kg
5弦6.67 kg6.28 kg
6弦6.92 kg6.66 kh

太さもコンポジットの方が太く、芯線や金属線の使い方が違い、音の差が生まれているようです。

私はコンポジットの方が好みです。

コーヒー色の3弦を使わなかったとしても優れたセット、もったいない気持ちはあるけど

このプロアルテコンポジット、まだ張ったばかりで慣らし運転が終わっていませんが、それでも私は好みの音です。

低音弦が明るい音で前に出るというのは最近の流行でもあるのでようやく時代が追い付いたか、という気もします。

コーヒー色のコンポジット素材の3弦は音の好みよりも弾いた時の感触が受け入れられるかどうかかな、と思います。

唯一気になるのは余った3弦についてです。4弦だったら下手ってきたら交換とかありますが、3弦が余っても正直困ってしまいます。一応、ハーフセットというセットでCNN-3TとCGN-3Tというものがあり、前者がすべてナイロンのセット、後者が3弦だけコンポジットというものがあります。これとSCN-3Bというコンポジットの低音弦のセットを買えば望みどおりになるんですが、逆に高いんですよね。。。

ナイロンかコンポジットかどちらかだけのセットを作ってほしいとも思いますが、原料費なんて大したことがないのでそんなセットを作るくらいなら両方つけた方がメーカーとしては安いのかもしれませんね。

2~3倍持つというところも多少は期待しつつ慣らし運転が終わったらまた追記したいと思います。

(追記): 持ちは2~3倍も持たない、3弦のキュッキュッという音が気になる

その後使っていましたが、残念ながらやはり低音弦は2~3倍も長くはもちませんでした。よく弾く人はやはりあまり持たないのですね。

それよりも最後まで気になったのが、皮膚の部分で3弦のコンポジット弦を擦った時に出る「キュッキュッ」という音です。表面の平滑度が低いのか何なのか地味に気になる音がします。

聴いている人は気にならなさそうですが、弾いている人はちょっと。。。音はしっかりした音が出ながらカーボン弦のようにキンキンならないのでいいのに、ちょっと残念な点です。

皮膚の状態によって出る/出ないもあるかもしれないので合わないようならナイロン弦に変えた方がいいかもしれません。

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