クラシックギター弦のレビューを続々追加中です。今回はオプティマです。

クラシックギターのトルナボスとは その効果と役割、歴史について

トーレスのトルナボス楽器
楽器 豆知識

クラシックギターの知る人ぞ知る、あるいは忘れられた構造の1つがトルナボスです。トーレスのギターでよくみられるこの構造は何のためにつけられ、そしてなぜすたれていったのでしょうか。

スポンサーリンク

トルナボスはギターのサウンドホールに設置された漏斗状の構造

トルナボスとはギターのサウンドホールに設置された漏斗状の構造のことを言います。

下の写真はトーレスのFE19と呼ばれるギターのトルナボスです。漏斗型をしていますが、サウンドホール側が大きく、裏板側が小さくなっていることがわかります。

アントニオ・デ・トーレス ギター製作家 その生涯と作品より

主に金属(青銅)に打ち抜き細工を施したもの

このトルナボスは主に青銅などの金属で作られたようです。金属を漏斗状に加工し、それに打ち抜き加工を施しています。

また、金属的な音を嫌って木で作成している製作家もいます。

裏板からは浮かせて固定

トルナボスは以下のようにギターに固定します:

アントニオ・デ・トーレス ギター製作家 その生涯と作品より

ここでポイントは裏板からは浮いているという点です。トーレスはトルナボスの直径は固定したものの、深さ方向の長さは作品ごとに変えたそうです。長さを変えると共鳴する音の高さが変わるので、音作りによって変えたのでしょうね。

村治佳織のロマニリョスはトルナボス付き

最近では村治佳織の使用しているロマニリョスには木製のトルナボスがついています。最近会発売したエッセイの表紙になっているこの楽器です:

村治佳織のエッセイ本「いつのまにか、ギターと」

エッセイについてはこちらの記事を参照ください:

なぜトルナボスが生まれたのか

このトルナボスが生まれたのは19世紀といわれています。

19世紀にはそれまで富裕層のものであった音楽が大衆も楽しむようになり、高尚なものよりもわかりやすいものが求められるようになりました。その「わかりやすさ」の指標の1つが音量の変化であり、そのために楽器にも出せる最大音量の大きさが求められます

ギターという楽器は音量が小さな楽器なので、何とか音量を上げようといろいろな工夫がなされ、その中の1つがトルナボスであったといわれています。

発明したのはトーレス?

現代ではトルナボスといえばトーレスという認識がありますが、発明したのがトーレスかどうかについては確たる証拠がないそうです。

アントニオ・デ・トーレス ギター製作家 その生涯と作品によればグラナダのホセ・ペルナスの発明であるという説と、トーレスの発明であるという2つの説があるそうです。エミリオ・プジョールはトーレスの発明だと言っているとか。

ちなみに、トーレスのもっとも有名なギターの1つであるレオナにもトルナボスはついています:

ギターの中に筒を入れるアイデアはその前からあった

とはいえ、19世紀の音量増大が求められる時代において、トルナボス登場以前にギターの中に筒状の構造を入れるというアイデアはあったそうです。

5本の筒が入っていたり、二重音響板と筒を組み合わせたりと色々なものが生まれた先にトルナボスがあったそうです。

今も昔もクラシックギターという楽器には見た目が重視されますので、いかに見た目を保ったままで音量を向上するのが重要であり、そのアイデアの1つがトルナボスを含む「中に筒を入れる」という構造であったということです。

トルナボスは低音を増強し、音を暗くする

トルナボスを入れた時のギターの音に対する効果としては、低音を増強する効果があります。

音響学的に解析するのは複雑すぎて難しいようですが、円錐形の楽器と直線状の楽器を比べると、低音の出が良くなり、高音が出づらくなるのだとか。

その代わり、高音が出づらくなることから音の明るさが失われて暗い音になる傾向にあるのだそうです。

さらに、トルナボスをつけた楽器は奏者よりも聴衆にその変化がよく聞き取れるのだそうです。演奏者によってはこの差を嫌ってトルナボスがついていない楽器を好んだという記録が残っているのだとか。

トルナボスはなぜすたれていったのか

現代においてトルナボスが取り付けられているギターはあまり見ません。それはなぜなのでしょうか?

第2製作期にはトルナボスの採用をやめていったトーレス

実はトーレスも生涯にわたってトルナボスを使っていたわけではなく、主に使っていたのは前半なのだそうです。

以下の記事にも書いた通り、トーレスには2つの製作期があります。

実は第1製作期(FE)には現存する39本のギターのうち17本にトルナボスがついているのに対し、第2製作期(SE)には49本のうち2本にしかトルナボスがついていないのだそうです。

現代においてすたれた理由は不明

なぜトーレスがトルナボスをやめたのか、そしてなぜ現代の製作家がトルナボスを使わないのかについては明確な理由は不明です。

考えられるとすると、

  • 製作および修理が大変(トーレスの楽器でも修理の時に取り外されたままになっているものがあるとか)
  • 音が暗くなるのを嫌った
  • トルナボスがなくても音量が大きくなる技術ができた

といったところでしょうか。

現代においてトルナボスをつけている製作家はトーレスレプリカを作っている製作家か、伝統的な製作の仕方を守っている製作家に限られます。

O-Portで誰でも簡単にトルナボスの効果を試せる

実際にトルナボスの効果を試したいという人もいるでしょうが、実はそれに適したアクセサリがあります。”O-Port”と呼ばれる製品です。

取り付け方はいたって簡単で、サウンドホールの中に入れるだけです。これにより、倍音成分が増え、サステインが長くなるのだそうです:

O-PortのHPより

使用した人の感想だと、やはり低音が強くなるようです。

金属でできているわけではないので昔ながらのトルナボスの音質ではないかもしれませんが、どんなものか試す分にはいいかと思います。

ちなみに、上で紹介した2つのうち、Smallはサウンドホールが86mm~92mm、Largeは100mm~105mmのものに対応するそうです。

先人たちの知恵が詰まったトルナボス

このようにトルナボスは先人たちがどうにかクラシックギターの音量を上げようと頑張った知恵が詰まったものです。

残念ながら現代では一般的とは言えませんが、ここから得られた知見があって今のギターがあるのでしょう。

現代において音量を上げる効果があるものといえばダブルトップ、ラティス、レイズドフィンガーボードなどがあります:

きっとトルナボスも登場した時はこういう技術と同じように賛同する人あり、否定する人ありだったのでしょうね。

現代の新技術のどれが生き残るのか、はたまたトルナボスの発展形が出てくるのか、まだまだギターの進化は続きそうです。

スポンサーリンク
クラシックギター情報ブログ 最高の一音を求めて

コメント

タイトルとURLをコピーしました