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クラシックギターの遠達性について調べてみた

楽器
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クラシックギターの楽器としての良さを示す要素の一つとして「遠達性」という言葉がよく使われます。でも、音量、音質、音程に比べるとどうも曖昧なものに感じます。ちょうど雑誌で特集されていたこともあり「遠達性」というものについて調べ、考えてみたいと思います。

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「遠達性」とは?

まずは「遠達性」とは何か?という点をまとめてみます。

そもそもこの記事のコンセプトとして、どんな楽器が遠達性があるかとか、どちらの方が良いとか、そういった個人的な意見を述べるつもりはありません。世の中の情報をまとめて、それに対する客観的な意見を述べたいと思います。

遠くで聴いても大きな音がすること、らしい

「遠達性」とは一言でいうなら遠くで聴いても大きな音で聞こえること、のようです。

さらに言えば、遠くで聴いても近くで聴いているのと同じ音質でよく聞こえることというのも条件に入るようです。

この言葉はどうもクラシックギターで主に使われる言葉のようで、Googleで「遠達性」を検索すると上位のほとんどはクラシックギター関連のサイトになります

クラシックでない楽器はPAを使うので遠くで聞こえる聞こえないはアンプ/スピーカー次第なのであまり気にならず、クラシックギター以外のクラシック楽器は音量が大きいのでそれほど遠くで聴くときの音量について気にならないのでしょう。

「傍鳴り」とはカテゴリがまた違うもの?

この遠達性の話が出てきたときによく出てくる単語に「傍鳴り」というものがあります。

これは、楽器を弾いた時に近くだと大きな音で鳴っているように聞こえるが、ちょっと離れるとそれほど大きな音に聞こえない、というものです。

もっと極端には、弾いている本人は大きな音で気持ちよくなっているように思えるが、聴いている人たちはそうでもない、というかなりネガティブな意味で使われるようです。

では、傍鳴りでなければ遠達性があるのかというとそのあたりはよくわからず、自分も聞く人たちも大きな音で聞こえるものも遠達性があるといえるようです。

ちなみに、「傍鳴り」は「そばなり」と読み、「側鳴り」と書いている人も言えます。また、「遠達性」のことをこれに対比させて「遠鳴り」と呼ぶ人もいるようです。

結局はあいまいで主観的な要素

色々調べてみましたが、結局「遠達性」とはかなり主観的な要素のようです。

音量がデシベルで計測できたり、音程がヘルツで測定できるのとは異なり、かなり人によって言うことの違うものということだけはわかりました。

その意味で、あいまいな要素であるとも言えます。

「遠達性のある楽器」とは?

しかしながら、世の中の楽器の売り文句の一つとして「遠達性」という要素が存在するのも事実です。

どういった楽器が遠達性があり、どういった楽器が傍鳴りなのか調べてみました。

ハウザーの楽器は遠達性がある、らしい

遠達性といえばハウザーのようで、調べてみるとハウザーに関する話がたくさん出てきます。

曰く、ハウザーは弾いている本人は大きな音に聞こえないが、遠達性があり遠くまでよく響く

その理由として、ハウザーは倍音成分が少ないため遠くまでよく響くのだと。その理由として表面版がぶ厚いのでいいとかいう話もありました。

ハウザーの遠達性については否定的な意見は少なく、おおむね遠達性があるという意見が大半を占めているようです。

ダブルトップやラティスブレーシングの楽器は遠達性がない?

また、遠達性について調べてみるとよく目にするのが、最近はやりの音量が大きな構造として有名なダブルトップやラティスブレーシングの楽器は遠達性がないという情報です。

確かに音は大きいんだけどそば鳴りで遠達性がないとか、遠くで聞くと音がやせて聞こえるといった声があります。

一方で、音量は音量なんだから、遠くで聞いて音が小さいというのはおかしい、という意見もあり、判然としません。

客観的に見て言えることは、最近のコンクールで入賞されるギタリストは良く新構造の楽器を使っているということと、デシベルで測った音量では確かに新構造のギターの方が音量が大きいということです。

(追記): ダブルトップ等の新技術については以下の記事にまとめました:

傍鳴りを売りにした楽器は見たことがない

一つ不思議なのは、「遠達性がある」ことを売りにしている楽器はあっても、「傍鳴りする」ことを売りにしている楽器はないという点です。

売りにはしていなくても、この楽器は傍鳴りだ、という評価がある楽器というのは先ほど紹介した新構造のギターに限るような気がします(安い量産ギターは除く)。

そんなに大ホールで弾くことがないアマチュアにとっては自分で弾いた音がよく聞こえますよ、というのも売りであっても良いと思うのですけどね。

現代ギター2018年10月号は遠達性の特集

そんなわけで個人的には遠達性という言葉にはかなりもやもやしたものを持っていたのですが、ちょうど現代ギターの2018年10月号が遠達性に関する特集でした。

ネット情報の情報ではなく出版された記事であることと、特集に出ているのが大学の教授や福田進一氏であることから、信頼性が持てる内容が書かれているかと思いました。

が、結局なんだかよくわからなくてもやもやしました。

詳細は記事を読んでいただきたいのですが、以下が感想です。

実験を行っていない

大学教授が出てくるということで、複数のギターを使って遠達性についての客観的なデータを取り結論を作るのかと思いきや、遠達性に関しては大学教授の意見のみでした

もちろん、人間が弾いても弾き手とギターの相性があり、機械的に弦をはじいてもそれがそのギターにとって最良の方法かとか難しいところはありますが、せっかくなので実験をしてほしかったな、というのが正直な感想です。

ちなみに、遠達性ではありませんが、クラシックギターの構造と音圧については実験をした論文があります。この論文では機械的に弦を弾く方法を取っているようです。

倍音成分があったほうが遠達性がある?

とりあえず実験結果がないところは置いておいて、大学教授の意見として倍音成分がしっかり出たほうが遠達性があるというところに衝撃を受けました

ハウザーについてのところにも書きましたが、一般的には倍音成分が小さくて実音(基音)が大きい方が遠達性があるといわれてきたように思います。

たとえば、ギタルラ社は

なぜなら、手もとでは良く響いていて気持ちよいけれど、倍音には遠鳴りする力はありませんし、

(ギタルラ社HPより)

と書いてありますし、フォルティア社も、

ところで、この遠達性つまり遠くまで通る音とは何なのでしょうか?  遠くにいても一音一音がはっきりと明瞭に聞こえてくる。いわゆる分離の良い音を奏でる楽器の方が遠達性に優れているように思えます。反対に和音の融合性が良い楽器はある意味、この音の分離があまり良くない場合が得てして多いようです。

手元でよく鳴る楽器は大抵は倍音の多い楽器です。

(フォルティア社HPより)

と書いています。

また、古楽器政策家の方も、

このために、側鳴りする、倍音の多い楽器が作られているようです。

(古楽器製作家 平山氏のHPより)

といっています。

なぜ倍音成分が多い方が遠達性があるといっているのかは現代ギターを見ていただくとして、どっちが正しいの?というのが一般人としての素朴な疑問です。

裏板はしっかりと剛性があったほうが良い?

また、ギターの裏板についてはしっかりとした剛性があったほうがそば鳴りしないということも書いています。

一般にダブルトップやラティスブレーシングの新構造のギターは裏板と側板を硬く振動しづらくしているような気がします。その意味では新構造のギターは遠達性があるともいえるような気もするのですが。。。

マイクの乗りがよくない楽器は遠達性がない?

一方ギタリストの福田進一氏は、マイクの乗りがよくない楽器は遠達性がないということを述べています。

氏の経験では新構造の楽器はマイクの乗りがよくなく、有名なレコーディングエンジニアの方も新構造の楽器は良くないといっているとか。

雑誌の特集としては偏りが大きいか?

この特集に出てきた教授は河野製作所の社長である桜井正毅氏との共同研究を行っているそうです。

福田進一氏も桜井正毅氏製作のギターを使っています。そして、桜井氏のギターにはダブルトップやラティスブレーシングといった構造のギターはありません。

その意味では、雑誌の特集としては手前みそ感が強いのも事実かと思います。できれば、新構造派の意見も見たかったな、と思います。

調べれば調べるほどよくわからない遠達性、アマチュアはあまり気にせずに好きな音を選んだ方が良いかも

そんなわけで、雑誌の特集ですべての謎が解けるかと思いきや、よりよくわからない状態になってしまいました。

今わかっていることは、「遠達性」とはかなり主観的な見方で、何ら客観的な指標がないということだけです。

色々調べる中で、ギタリストの田中薫氏がこんなことを言っていました:

遠達性がどうの、とか 遠くで聴くとどうの・・とか
まことしやかな‘言い伝え’ではなく、

私は好きだ、嫌いだ。でちゃんと意見を語るべきだと思います。

(田中薫氏のブログより)

まったくその通りだと思います。

購入するギターを迷いに迷って、最後の一押しに遠達性!というのはありだと思いますが、最初から遠達性ありきでギターを探すのは危険なような。

コンサートホールで弾いてお金を稼がなくてはならないプロならまだしも、アマチュアなら遠達性なんてものは気にせず、弾きやすさや好きな音で選ぶのが良いような気がします。

さらに言えば、きっとへたくそが弾いた遠達性のある楽器より、上手な人が弾いた遠達性のある楽器の方が、「遠達性」はあるでしょう。そこで悩むよりも自分の腕を上げたほうが遠達性は出るのだと思います。

興味のある方は現代ギターの記事を読んでみることをお勧めします。電子書籍版もあります:

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